【美容皮膚科医監修】敏感肌、乾燥肌のスキンケア
2022/06/04
敏感肌とは
敏感肌とは、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患によって肌が荒れている状態のことや、季節の変わり目や生活習慣の変化、ストレスなどささいなことで肌トラブルを起こしやすいといった一時的な肌の不調を言う場合など、普段の健康なお肌ではなんでもなかったようなわずかな刺激でも肌が敏感に反応してさまざまな肌トラブルを起こす状態のことをいいます。お肌がときどきカサカサ乾燥してかゆみや赤みをおこしたり、ちょっとした刺激に対しても敏感になってしまう、化粧品をつけた後にヒリヒリする、洗顔後にチクチクと焼けるような感じがする、お肌がつっぱるなど、少しでもあてはまるものがあればあなたも敏感肌かもしれません。
敏感肌の人はお肌が乾燥しがちなので、乾燥したお肌に水分を与える保湿ケアが大切です。
ここでは敏感肌や乾燥肌の人のための保湿ケアについて、保湿剤の種類や選び方、おすすめの保湿成分やスキンケアのポイントなどをご紹介します。
目次
敏感肌、乾燥肌の原因
なぜわずかな刺激でもお肌が敏感になってしまうのでしょうか。
その原因は、皮膚のバリア機能の低下が関係しています。
皮膚のバリア機能とは、外的刺激からお肌を守り水分を保持する機能のことをいいます。
表皮の一番外側には角層があり、この角層にある「NMF(natural moisturizing factor:天然保湿因子」、「細胞間脂質」、「皮脂膜」の3つがバリア機能にとって重要な役割を果たしています。
天然保湿因子は細胞をふっくらさせて水分を保持する働き、細胞間脂質はその名の通り細胞と細胞の間にある脂質のことで細胞同士の接着剤のような働き、皮脂膜は肌をベールのように覆って守ってくれる働きがあります。細胞間脂質にはセラミドやコレステロールがあり、その約半数をセラミドが占めています。
皮膚のバリア機能が低下すると、水分を保持できなくなって乾燥してしまい、外的刺激が肌の中に入り込んでしまうため、普段は防御できている刺激に反応してしまってかゆみや赤み、かぶれなどさまざまな肌トラブルをおこしやすくなります。
敏感肌、乾燥肌の人の保湿ケア
敏感肌や乾燥肌の人は、皮膚のバリア機能を保つために毎日の保湿ケアが大切です。
正常で健康な肌のバリア機能は、水分の保持と適度な油分といった水分と油分のバランスが整っているため、肌あれを防ぎ、なめらかでうるおいに満ちた美肌を保つことができます。
洗顔後は化粧水で乾燥したお肌に水分を十分に与えてあげましょう。
単に水分を補っただけではすぐに蒸発して元の乾燥状態になってしまうので、化粧水の後は必ず乳液やクリームなどの油分の入った保湿剤で適度な油分を補い水分の蒸発を防ぎます。
水溶性の保湿剤で天然保湿因子を補い、セラミドや油性成分で細胞間脂質や皮脂膜を補ってあげると保湿力が高まり、乾燥症状が抑えられるでしょう。
皮膚のバリア機能を整える保湿成分
皮膚のバリア機能の天然保湿因子は、乳酸やカルボン酸などのアミノ酸が含まれていて、皮膚を弱酸性に保っています。細胞間脂質にはセラミドやコレステロール、皮脂膜はスクワランで構成されているので、これらの成分を補ってあげると皮膚のバリア機能が高まります。
・セラミド
セラミドは細胞間脂質の約半数を占める重要な成分です。水にも油にも溶けにくい性質を持っていて、化粧水や乳液、クリームなどさまざまなアイテムに配合されています。
原材料により天然セラミド、ヒト型セラミド、植物性セラミド、合成セラミドの4種類に分けられます。
・アミノ酸
天然保湿因子にはセリンやグリシン、グルタミンの代謝によって生じる保湿性の高いピロリドンカルボン酸などが多く含まれています。・スクワラン
サメ類の肝油中に多く含まれるスクワレンを酸化しないように安定化させたものがスクワランです。また、オリーブから取れたものを植物性スクワランといいます。皮膚に対する浸透性がよく、ベタつかず皮膚刺激がほとんどないので肌なじみが良い成分です。
敏感肌、乾燥肌におすすめのアイテムの選び方
敏感肌や乾燥肌におすすめのアイテムは、保湿力が高く、刺激をおこす可能性のある成分を含んでいない低刺激のアイテムです。また、肌の炎症を抑える成分が配合されているアイテムもおすすめです。
・アラントイン、グリチルリチン酸2K
アラントインやグリチルリチン酸2Kは炎症やアレルギーを抑える効果が期待でき、肌荒れを起こしている時におすすめの成分です。・弱酸性のアイテム
健康な肌はpH4.5~6の弱酸性を保つことで細菌の増殖を防いでいます。シャンプーやボディソープ、洗顔の多くは弱アルカリ性です。健康な肌だと一時的に肌がアルカリ性に傾いても正常なpHに戻すアルカリ中和能がありますが、バリア機能が低下しているとアルカリ性に傾いたままになってしまい、pHのバランスが崩れて細菌による炎症をおこしやすくなります。
弱酸性の洗顔料はバリア機能の低下やアルカリ中和能が低下している状態でもpHのバランスを崩さず使用できるので、敏感肌の人におすすめです。
敏感肌、乾燥肌の人に気を付けたい成分
・香料
香料には天然香料と合成香料があります。化粧品に香りを加えるために配合される成分です。皮膚のバリア機能が低下している敏感肌や乾燥肌の人には刺激になる可能性があります。・アルコール
アルコールは肌に化粧水をつけたときの清涼感を与えるために配合したり、植物エキスを溶かすときの溶媒として使用されます。アルコールにアレルギーがある人は肌荒れを起こす可能性があるので注意しましょう。・防腐剤
化粧品は一般的に常温で保存されることが多いため、微生物の繁殖を防ぐために防腐剤が使用されます。メチルパラベン、エチルパラベン、フェノキシエタノールがよく使用されます。メチルパラベンは殺菌力は弱いものの、肌への刺激が非常に少ないため、低刺激化粧品に使用されます。また、パラベンフリーの化粧品にはフェノキシエタノールが配合されることがありますが、パラベンよりも殺菌力が劣るため、単独で配合する場合はパラベンよりも配合量が多くなります。香料やパラベン、アルコールなど特定の成分が入っていないから良いとは限りません。これらの成分は基本的に安全に広く使用でき、細菌の繁殖を防いだり、化粧品に香りをつけたりなど良い働きをしてくれる成分ですが、なかにはお肌に合わずアレルギーや肌荒れをおこす人がいます。
むやみに特定の成分を避けるのではなく、自分のお肌に合うかどうかまずは試してみるのがおすすめです。
お肌に合わない成分が分かっている場合には、化粧品の箱や容器に書かれた全成分表示を確認すると良いでしょう。
敏感肌、乾燥肌の保湿ケアのポイント
敏感肌、乾燥肌の改善には、肌にたっぷりと水分を補い、適度な油分で水分と油分のバランスをとる保湿ケアが重要です。効果の高いスキンケアアイテムを使用していても、使う順番や使用方法が間違っていれば保湿効果は十分に得られません。ここでは保湿ケアの正しい使用方法について紹介します。
・スキンケアで肌に摩擦を与えない
摩擦は肌にとってダメージとなり肌荒れやしみ、くすみの原因となります。洗顔はしっかり泡だて、泡をのせて撫でるように洗いましょう。化粧水や乳液をつける時はパッティングを避けて手のひらでおさえるようにしてつけましょう。・化粧水は洗顔後すぐにつける
洗顔後は皮膚のバリア機能の天然保湿因子やセラミドなどの細胞間脂質が流出しやすくなり、乾燥しやすくなります。洗顔後は1分ごとに肌の水分量は減少します。タオルでおさえるように水分を拭いた後は、すぐに化粧水、美容液、乳液などで保湿しましょう。・保湿剤の使用量はしっかりと
十分な保湿効果を得るために、保湿剤はたっぷり使いましょう。清潔なてのひらに保湿剤をたっぷりとり、手のひら全体でやさしく包むように馴染ませましょう。・保湿剤は重ねてつける
化粧水や乳液だけで保湿が足りないときは、美容液やクリームを追加しましょう。使用する順番は 化粧水→美容液→乳液→クリームの順 に使用します。
水分が多い保湿剤は先に、油分が多い保湿剤は後につけます。
先につけた保湿剤が肌全体に馴染んだら次の保湿剤をつけるようにします。保湿剤を組み合わせて使用することで、保湿効果が高まります。
・保湿の回数の基本は1日2回
保湿は朝晩の一日2回が基本です。ただし、冬の時期や夏のエアコンなど日中も乾燥するときには保湿の回数を増やしてしっかりと保湿しましょう。土方 瑛香
Teruka Hijikata
皮膚科・美容皮膚科医
2010年帝京大学医学部卒業。都内一般外科、呼吸器外科を経て、2020年より都内美容皮膚科に勤務
化粧品成分検定1級、ジュビダームビスタ認定医、ボトックスビスタ認定医
外科専門医、呼吸器外科専門医